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     2006年 9月 29日
末永 卓幸 氏

『ご挨拶』

こんにちは、全国の海族の皆さん。
私はこの度、ボートドットコムのコラムの一端を担当させて頂く事になりました、末永卓幸(すえながたかゆき)と申します。

私は、ミクロネシアのトラック諸島(チューク諸島)に30年住んでおりまして、旅行業を営んでおります。
息子3人(27歳、18歳、13歳)と妻の5人家族です。

30年の南の島での生活を通しまして、日本の皆様に南の島の楽しいお話をお届けいたします。

これからこのサイトを通しまして、皆さんと楽しい海の話題を共有できればと願っております。
では、名前共々、末永くどうぞよろしくお願い致します。


『深海からの贈り物』 −オウム貝−

皆さんは、『オウム貝』をご存知でしょうか?
『生きた化石』と呼ばれる『オウムガイ』の殻をオウム貝と呼んでいます。
オウムガイは、今から5億年も前の太古の地球の海に繁栄し、今もフィリピンやミクロネシアの深海にひっそりと生息する希少な古代生物です。
いつもは深海に生息し、夜になると浅海に上がってくると言われています。
殻の中にたくさんの隔室を持ち、自ら浮力を調整して深海から浅海を自由に行き来できる特殊な機能・構造を持っています。

死んだ殻は、この隔室のお陰で海面に浮き、洋上を漂い、世界各地の海岸でその漂着が確認されています。
こうして世界の海を旅したオウムガイの殻は、『生きた化石』として、世界中の貝愛好家や生物学会の貴重な資料、コレクションとして重宝されています。

日本名は『オウム貝』と言います。
貝の形が、鳥のオウムのクチバシに似ているところからこの名があります。
英語名は『ノーチラス貝』です。
ノーチラスとは、海洋を旅する水夫を意味するギリシャ語です。
海面を漂い、世界の海を旅する貝ならではのネーミングですね。

ノーチラスと聞けば、そう、もう皆さんもお気付きの通り、ジューヌ・ベルヌの『海底2万里』に出てくる、モネ艦長の『ノーチラス号』、それに、世界初のアメリカの原子力潜水艦『ノーチラス号』もまたこのノーチラスからとったものなんです。

貝の中の特殊な隔壁が潜水艦の構造を思わせ、自由に深海を浮遊するところから、潜水艦の名前として使用されたのです。

ところで、私の趣味の1つに貝の収集があります。
長年、チュークの海から集めてきた海の宝物です。
そして、そのコレクションの中に、3個のオウム貝があります。

1個目は現地人から入手したもので、初めて手にしたオウム貝を見て、とても嬉しかったのを覚えています。
2個目は、無人島の砂浜で自分で見つけたものでした。
この時は1日中ウキウキしていました。
そして最後の3個目は、なんと、洋上で発見したものなのです。
深海から出(い)でて海洋をさまよっていたオウム貝に出会うという非常に珍しい出来事に遭遇したのです。

御客様をご案内して、無人島めぐりのボートの上でした。
疾走するボートの上から、次々と変わってゆく海面を何気なく眺めていた私の視野に、『おやっ?』と思われる漂流物の影が飛び込んで来ました。

ボートがその漂流物から過ぎ去った瞬間、残像を見つめる私の頭の中には、『ノーチラスだ!』と言う言葉が何度も何度も飛び交っていました。
いつも貝殻に興味を持ち、とりわけオウム貝には格別な想いを抱いていた私だからこその発見だったのかもしれません。

すぐさまボートを元来た方向に取って返し、この稀有の出会いの主と手をあわせる事が出来たのでした。
5億年という気の遠くなるような太古の地球で繁栄し、今又、深海から出て大海をさまよい私と邂逅した。

新年の夢と希望を頭に描きながら海を見つめていた私への深海からの贈り物でした。

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