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       ヤマハ PC−26試乗記
2006年6月12日
記事: 神奈川 景山





僕は今まで一読者としてボート雑誌を観ておりましたが、自分が購入できる年式のボートについての情報があまりにも少なく、古いボート雑誌を、マリーナの図書館等で情報をとっておりました。
しかし、沢山のバックナンバーから目的の艇の情報を探し出すのはかなり大変ですし、実際にはなかなか見つける事が困難なのが実状です。

最近のボート雑誌に載っている新艇情報も勿論面白いのですが、やはり現在市場に流通しているボートの情報が、新しく発行されるボート雑誌に載っていたら…と常々思っていました。
今回、ボーティフィールド誌からの依頼もあり、以前より自分が求めていた情報を少しでも皆さんと共有できたらと考えた次第です。
当時の銘艇の情報としてでも良いですし、同じ艇のオーナーがどのような使い方をされているかを知るための情報源としてでも結構ですので、皆さんに楽しんでいただけたらと考えております。

◆1984年デビューのベストセラーモデル
現在中古艇市場でも買い易い価格とタマ数の多さ、複数のエンジンバリエーションで人気のあるPC−26にスポットを当ててみたいと思います。

先ずは簡単なおさらいとしてPC−26の歴史をお話します。
PC−26は1984〜1990年まで販売されています。(1987年以降はPC−26IIへモデルチェンジ)
この販売期間はオイルショック後の景気拡大期(1984年東証ダウが10,000円の大台を突破)と重なった事もあり、ビッグセラーモデルとなり、現在中古艇市場には数多く存在します。

さすがに旧い箇体になると既に20年近く経っているモノもありますので、状態は千差万別で、まだ比較的キレイなモノからかなり見映えが悪くなっているモノ、エンジンを積み替えてあるモノ、ないモノなどバラバラです。
一番見かけるパターンは、新艇時からのエンジンをそのまま載せているパターンで、特に積み替えに高額な費用が掛かるディーゼル艇にはその傾向が多く認められます。

ディーゼル艇の中にはエンジンを積み替えている箇体もある事はあるのですが、傾向としては新品エンジン載せ換えではなく、中古のAD31を積み替えている箇体が多く、状態としては積み替えを行っていない箇体と大差ないと思います。
また、PC−26はドライブ艇ですので、中古艇を選ぶ際にはドライブの状態も気に掛かるところです。
ドライブの修理はエンジンに次いでお金の掛かる部分ですので、中古艇を選ぶ際には気をつける必要があります。
エンジンのオーバーホールを行うついでに、ドライブのオーバーホールを行うオーナーさんもおられますが、中にはドライブのブーツなど、ゴム部品さえも長期間交換していない艇もあり、ブーツなどの消耗部品を長期間交換していない中古艇を購入する場合は、購入後に一度交換する事をお勧めします。

PC−26の市場価格は、ガソリン艇で200万円前後、ディーゼル艇で300〜350万円前後くらいが目安です(平成18年6月現在)。
当たり前の話ですが、上記価格はあくまでも目安であり、箇体の状態、エンジンの状態や交換歴、オーバーホール歴などによって変わってきます。

買い易い価格であり、それでいてエンジン2基掛けのドライブ艇ですので、中古艇市場ではかなり人気があり、動きの良い艇ですが(PC−26の良さは中古艇の安さだけではありませんが、現状では値段で選ばれるオーナーさんが多いのも事実です。)、さすがに新艇時ディーゼルエンジン仕様で1800万円以上した艇ですので、購入後にはそれなりの出費を覚悟しなければいけません。

極端に言えば船外機艇の場合、エンジンを新品で積み替えても100万円前後の出費で済みますが、PC−26のような2基掛けドライブ艇の場合、ディーゼルエンジンとドライブを新品に交換すると、更に中古のPC−26が2艇は買えてしまうくらいのお金が掛かります(ガソリン艇の場合、半分くらいの出費で済みますが…)。
新品交換まで行わないとしても、日々のメンテナンスも、2基掛けの場合は全てが2倍掛かりますし、もともと高額な艇のため部品も決して安くないのです。

なんだか否定的な事ばかり書いてしまいましたが、現実的に26フィート前後のFB艇をターゲットに船を探した場合、船体代で200〜350万円の出費+日々のメンテナンス費用だけで、26フィートの2基掛けFB艇に乗れるのは大きな魅力です。
また、サイズ的にも一人で気軽に出航できるサイズでいて、大人2人くらいでしたら船中泊が可能な船と考えると、PC−26は、皆さん一番に名前を挙げる銘艇であると思います。


それでは前置きが長くなりましたが、いよいよ本題に入ります。
今回試乗にご協力下さったのは横浜のベイサイドマリーナに係留している氏原(うじはら)氏です。
氏原氏の愛艇は、1988年式のPC−26II、ボルボV6、4.3L、145馬力、ガソリン艇です。
このPC−26IIには新艇時、ボルボAQ211、 165馬力エンジンが付いていたと思われますが、今回の試乗艇は平成9年10月に前オーナーさんが現在のエンジンへ新機載せ替えを行っております。
オーナーの氏原氏も、まだこの艇を購入されたばかりで、現在は気になる部分の整備を行いながらマリーナ近辺のクルージングを行い、来たる日の遠距離クリージングに備えて、問題点の洗い出しを行っているそうです。

まず船体周りのチェックからスタートです。
船体全体にわたって小キズや船体の色あせなどが存在します。
メッキパーツにも白サビによるブツブツなども見受けられますが、年式を考えますと船体の状態は年式相応というところです。

今回の箇体も係留時、船体が微妙に右に傾いていますが、これはPC−26に多く見られる特徴で、この艇固有の問題ではありませんので、係留時に多少の傾きがある箇体があっても特に気にする必要はありません(勿論、傾きの程度にもよりますが…)。

アフターデッキはこのサイズのFB艇にしては、十分な広さを確保しています。
アフターデッキ右舷側のちょっと見難い場所に、デッキウォッシャーが付いています。
これは、釣った魚の血などでデッキが汚れた時に重宝します。

通常はアフターデッキ左舷側にシンクが付いていますが、今回の試乗艇はそこの部分に家庭用エアコンの室外機が置いてありました。
ノーマル状態
シンクとシャワーがついています。
今回の取材艇
家庭用エアコンに置き換えてありました

この家庭用エアコンのパターンも、PC−26ではたまに見掛ける改造パターンの1つです。
この位置は海水も掛かりますし、雨も直接当たりますので、エアコンにとっては決して良い場所ではないのですが、室外機を置いても一番邪魔にならない場所ですし、今どきのエアコンは安いものでしたら3万円台で購入できますので、高価なマリンエアコンの取り付け費を考えれば、2年に一度は新品に交換するくらいのつもりで付けても良いと思います(実際には運が悪くなければかなり長期間持つはずですから…)。

通常シンクには清水シャワーが付いていますが、このオーナーさんはシンクのみ取り外し、シャワーは木で作ったベースに掛けておけるようになっています。

基本的には発電機を積んでいない艇ですので、エアコンの使用はマリーナでの陸電使用時に限られます。
ただ、夏場でも奔っている際には、それほど室内も暑くなりませんのでエアコンが無くても十分だと思います。
ただし、真夏の炎天下ではマリーナなどで船を留めている時は、キャビン内がサウナ状態になりますので、エアコンがあると本当に助かります。

陸電はオプションでしたので、装備している艇と無い艇が存在します。
今回の取材艇は、現オーナーさんになってから付けられたそうです。
ノーマル状態での電気関係のブレーカーは、ロアステーション右サイド壁の中にありますが、いちいちドアを外して操作する不便さがありますので、このオーナーさんは室内で簡単に切り替えが出来るように家庭用のブレーカーを後付けしてありました。

室内は結構キレイな状態でした。
室内は4人くらいでお茶を飲むには十分な広さです。

通常はロアステーションの手前に大きな操船用のシートが付いています。
船で奔りまわる事を中心に船を使われるようでしたら、このロアステーションは絶対にあった方が良いのですが、今回のオーナーさんは船でノンビリされる事を目的として艇を購入されましたので、シートは取り外してしまったそうです。
そのお陰で、室内はかなり広く見えます。



以前、僕もPC−26に乗っていた時期がありましたが、やはり今回のオーナーさんと同様にロアステーションのシートを取り外しており、代わりに150Lの大型クーラーボックスを置いていました。このクーラーボックスは、上にクッションを乗せてベンチ代わりにしておりました。
キャビン内の広さは十分ありますので、座る場所さえあればキャビン内で大人5〜6人で雑談したりする事も可能ですし、折りたたみのイスなどもベンチ換わりのクーラーボックス内に収納出来ますので、かなり重宝しました。

ただし、泊るとなると大人2人が限界だと思います。
勿論、シートの上やキャビン内の床に雑魚寝する事を前提にお話すれば、もうプラス2人くらいは泊まることが出来るかもしれませんが、快適に泊まれる人数は大人2人だと考えます。(しかも男同士だとVバースで二人は辛いです。スペース的にも、精神的にも、、、)
大人2人でしたら特別に身体が大きな人でない限り、足を伸ばしてVバースに寝ることが可能です。
僕も嫁さんと二人で頻繁に泊まりましたが、結構快適でした。
キャビン内のシンクには足踏み式ポンプの蛇口と保冷庫が付いています。
保冷庫は電気式ではなく、氷などを入れて温度を保つタイプです。
箇体によっては電気式の冷蔵庫やモーター式の水道が付いているものもあります。

FBは3人掛けのベンチシートです。
FBからは船体まわりの見切りも良く、操船するには丁度良い高さです。

シート位置から考えると、ちょっとステアリング位置が低すぎて、長距離の運転では少し腰が痛くなるかもしれませんね。
この辺は体型にもよりますので個人的な感想ですが…。
FBシートは前後にスライドしますので、体格にあわせて多少の調整は可能です。



バウデッキもある程度の広さを確保しており、また比較的平らで使い勝手は良いと思います。
花火見物などの際には、バウデッキで3人くらいでしたら、真ん中にビールとツマミを置いて、悠々と車座になって座れる広さがあります。

次に走りをチェックしてみましょう。
マリーナから出て徐々にスロットルを開けていくと、船は多少のバウアップを伴って加速していきます。
エンジン音はアフターデッキに居ると多少気になるかもしれませんが、ディーゼル艇に比べると音量、振動共に小さく、大声を出さずに十分同乗者と会話を楽しめるレベルです。
また、スロットルを開けた時のピックアップも良く、ゼロスタートからの加速もガソリン艇に歩があります。
勿論、ディーゼル艇は燃料の安さという大きなメリットがあるのですが、純粋に船の機能の部分だけを見るとガソリン艇の良さが際立ちます。

ディープV形状のハルを持つPC−26の走りは、当時の船としては文句のない走りだと思います。
140馬力のガソリンエンジン2基掛けは一般の方が遊びで乗る限り、このサイズに必要にして十分なパワーだと思います。
今回の試乗艇もMAXスピードで30ノットをマークしましたので、巡航スピードで走っても1時間あれば、東京湾ではかなり色々な場所に行けると思います。(ちなみに以前僕が乗っていたディーゼル艇はMAX27ノットくらいでしたね。)

荒れた海に出て行くと26フィートという比較的小さなサイズのため、不満が囁かれるPC−26の奔りですが、僕のように東京湾、相模湾を中心に日帰りクルージングがメインの使い方でしたら十分すぎる性能ですし、ボート経験の浅い方には全く不満のない走りだと思います。
このように書くと「PC−26は初心者向き?」とお考えになる方もいらっしゃると思いますが、上級者のボートオーナーさんでもPC−26を愛艇としてボートライフを楽しんでおられる方も大勢いらっしゃいますし、現在の市場価格といい、タマ数の多さといい、30フィート以下のFB艇を予算限定で探した場合、総合的に考えると決して悪い選択ではないと思います(と、いうか…お勧めです)。

ただPC(パシフィッククルーザー)という名前の通り、奔りを意識した艇だけあり、海上での停止状態ではそこそこの揺れを伴い、決して停止状態では安定性の高い艇ではありません。
その反面、使い勝手は良く、様々な用途に使用可能です。
本来の用途はクルージング艇ですので、決して底釣り向きではありませんが、3〜4人での釣りも可能ですし、夏場は島巡りでアンカリングをしたり、ウェイクボードや花火見物と、多目的に使用できます。
ほとんどの箇体にアウトリガーを装備しているので、クルージング途中にトローリングなども可能です。
一日中、大人数で遊び尽くすにはピッタリですね。

総合評価として、前述のように現在の市場価格から考えるとお勧めの一艇です。
1人で出航できる気軽さと、船中泊までこなすキャビンの広さを兼ね備え、それでいてガソリン艇であれば100万円台後半位からタマがありますので、手に入れやすいと思います。
ただし、一番新しいモデルでも既に15年以上は経過していますので、購入してから多少の出費は覚悟しておきましょう。
艇の状態によっては、購入価格の半分くらいの整備代が別途必要になる場合もあります。
前のオーナーさんが徹底的にメンテナンスを行っていない限り、この年式のドライブ2基掛けを購入して、全くお金を掛けずに乗れる事は、まずありえませんので、ギリギリの予算で購入をお考えの方は、いま一度考えた方が良いかもしません。

PC−26詳細データー
実長: 約9m30cm
(バウスプリッド・トランサムステップ含む)
実幅: 約2m85cm
(ガンネル含む)
アフトデッキサイズ: 横幅245cm×縦長さ195cm



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