前のページに戻る



2006年 7月 17日
ボート月刊誌より
本気で考えるボートの保管対策
船底の保護対策を考える

今回は保管対策における船底の保護です。
厄介な水棲生物やの海藻類からどうやって船底を守るか、ボートオーナーにとって大きな問題です。
特に海上係留保管をしているボートの、場合それなりの対策が必要です。


■水面下の保護対策
モータボートの船底は、水面に浮かべた瞬間から水中に棲む数えきれないほどの海生動植物の生命維持活動の標的となっています。
彼らは生きるためなので真剣です。
私たちも真剣に船底の保護対策を考えなければいけません。
それは、マリーナに上架係留しているボートでも同じです。
上架艇は、係留艇に比べて水面に浮かんでいる時間が短いということだけで、これらの生物の攻撃をあまり意識していないオーナーが多いようです。
しかし船底塗料を塗っていない船が真夏に2〜3日のクルージングに出航した後で上架してみると、小さなフジツボが確実に生息し始めています。

彼らはどのような所が棲み良いのか、その棲み良い環境と逆の環境を作ることが、彼らの攻撃を最小限に食い止める方法ではないでしょうか。
幸い、冬場は夏場に比べて彼らの成長・繁殖力は低下する季節です。
このオフシーズンにしっかりとした知識を身につけたいものです。
ボートは常に海水や紫外線、風雨といった厳しい環境にさらされています。
したがってちょっと油断をすると、それなりのダメージを受けてしまいます。
そこで平素から整備計画を立てて手入れを心掛けることが大切なのです。
今年のオフシーズンは船底の保護に対する整備計画を立て、その整備計画にそって船体をまず整備したいものです。

さて、その船底に付着する水棲生物ですが、夏と冬では断然夏場に付着し、冬場はほとんど付着しません。
その冬場にどのような状態で保管するのかですが、冬場はほとんど付着しないので、夏に付いた貝等を落として船底塗装をし、来シーズンまでの間保管するか、冬場はとりあえずそのままにしておき、シーズン前に船底塗装をして滑走するかです。
ベストな季節は、一般的に5月と10月といわれています。
また、保管中はギャレーやトイレのドレンコックがあれば締めておいた方が良いでしょう。
意外とドレンの奥まで貝が入って来ている場合があります。
船内機船はさらにキングストーンバルブやスターンチューブバルブなどを締め、十分な保管対策をして下さい。 

海上係留保管の場合のワンポイントチェック
基本的にボートは搭載されているパワーユニットによって、船外機、船内外機、船内機の3種類に分類することが出来ます。
これらは、エンジンとドライブのタイプが違うわけです。
この船のスクリューや舵、推進機に貝や海草が付着すると船底に付着したどころの話ではなくなるので、こまめな発船前点検が必要です。
船外機の場合は、出来る限りエンジンをチルトアップして水面上に出してしまうのが良いでしょう。
また船内外機艇となると、どんなにチルトアップしてもスクリューまでが完全に水面上に出るのは、ある一部分のメーカーのみ。
ほとんどのスタンドライブユニットは半分水中に浸かった状態になってしまいます。
船内機艇に至ってはどうすることも出来ません。
船内外機船の場合は、長期間海上係留しておく時、スタンドライブユニットをチルトアップしても半分は水中に残るとともに、水面付近の方が貝や海草が生息しやすいので、かえってスクリューに海生生物が付きやすくなります。
だったら最初からスタンドライブユニットをチルトアップせずに、水中に全沈させておいた方が良いという考え方もあります。
さらに、ユニバーサルジョイント部分には浸水防止のためのゴム製の蛇腹が使用されているので、あまり無理な角度で長期間止めておくと、その部分にヒビ割れが生じ、そこから一気に浸水なんてこともあります。
舵も中央で係留です。



■喫水線付近の保護対策
ここで言う海面上というのは乾舷ではなくて、どちらかと言うと喫水線付近のことをいっています。
このあたりは船体でもいちばん貝や海藻類が付着しやすい所でもあり、さらに浮流物や水あか、油などが付着しやすい所です。
時にはボートを係留している間に流木などが引っ掛かり、コツコツと当たってキズやクラックが入ってしまったり、大量のゴミをせき止めることにもなりかねません。
ゴミが引っ掛かったままにしておくと、流れに対する抵抗が大きくなり、係留索(ロープ)やクリートにも思わぬ負担がかかります。
もしそれでロープが切断したら…。
常にゴミなどが引っ掛からないように、船の周りもチェックしておきたいものです。

電蝕からの保護
船底塗装を行っている時に、ジンクプレートまで丹念に塗っているオーナーを目にすることもあります……。
電蝕とは海水の中に種類の違った金属、つまり、鋼の船にアルミのエンジンがあると電気現象を生じ、プラスをおびた金属(アルミ)からマイナスをおびた金属(鋼船)に電流が発生し、プラスをおびた金属の表面がそれによって腐食(電食)する現象を言います。

このアルミで出来ているエンジンのドライブを電食させないために、犠牲電極として亜鉛を取り付けておくわけです。
アルミと亜鉛の場合、今度はアルミがマイナスになり亜鉛がプラスとなるため、アルミの表面が電食するのを防ぐことが出来ます。
これがジンクプレート(板で出来ている場合が多い)といい、アルミ本体を電食から守る手段です。
亜鉛板ではなく、さらにマグネシウムをジンクプレートとして使用する場合もありますが、減りはアルミの数倍も早い。
この犠牲電極はケチケチせずに半分ほどに減ったらすぐ新品と交換したい。
もちろんジンクプレートの表面を塗装してはならず、逆にワイヤーブラシで磨き出して使用しなければなりません。



■ドライブの保護対策
冷却水の取り入れ口や舵、中にはスクリュープロペラにまで貝や海藻類が付着していますが、上架した時にはこれらすべてを根が残らないように根元からきれいに取り去りましょう。
舵やスクリュープロペラは特に強い水流が発生しているので多少のデコボコが意外と出力不足を感じる原因となります。
また、冷却水取り入れ口の奥に貝などが付着している場合もありますが、面倒くさがらずにあらゆる手段を使ってでも取り除きましょう。
このドライブや舵付近にはジンクプレート(亜鉛板)が取り付いている場合が多いので、新品の時の半分くらいまで電食作用が発生しているのが確認出来たら、迷わず新品と交換しておきましょう。

■船台に対する船底の保護対策
自船を上下架する時に必ず船台ごと海中に沈めて作業します。
この船台がサビで痛み、陸上に上架係留中に壊れたことを考えて下さい。
ものすごく大変な作業がそこには発生します。
当然費用の問題も大変なことになります。
日頃から船台はしっかりと点検しておき、自艇が海上に浮かんでいる間にサビを落とし、合成樹脂(フタル酸系ビニール系)ペイントを塗ってメンテナンスをしておきましょう。
上架係留中も真水で船体を洗浄しますが、自艇を台風の風や地震からしっかり支えてくれている船台です。
船体以上に船台も真水で洗い流し、タイヤやキャスターもグリスアップを行っておきましょう
また、5トン10トンの船が水の上に浮かんでいる時は、喫水線より下の部分全体でやさしく船体を浮かべていると考えて下さい。
しかし、船台の上に上架するということは、その重量すべてをたった4点6点で支えることにもなります。
もしもあなたの愛艇が6トンの船だとしたら、船台1つの受けの当たっている船底に1トン以上の重さが常にかかっているのです。
船底の丁度船台に乗っかる部分のキズや、それ以上にヒビ割れ等の点検をしっかりと行っておきましょう。
毎回上架する度に多少前後にずれているので、チェックは毎回しやすいと思います。


■船底塗装で保護する
船底に付着する藻やフジツボなどの貝類はボートにとってやっかいなもの。
見た目が悪くなるばかりか、エンジンの負担が増大し、スピードの低下や燃費が悪くなるなど、さまざまな問題を起こす原因にもなってきます。
そういった問題を解消してくれるのが船底防汚塗料です。
特に海上係留艇には必需品。

「ボートのメンテはマリーナまかせ」というオーナーも、この船底塗料の塗布ぐらいはマスターしておきたいものです。
その船底の塗装は、「手順」こそが唯一、最大のポイント。
特殊な技術を要する作業もなく、専門的な知識もさほど必要としない「船底塗装」は、その手順さえしっかり踏まえておけば、失敗することはまずありません。
まずは、これから行う作業全体の流れをしっかり把握しておくことが大切。
成否の分かれ目は、最後まで手を抜かない根気です。


■新艇を塗装する場合
新艇を塗装する場合は、フジツボ落としの必要はありませんが、ボトムには離型剤(積層したFRPをメス型から外すときに剥がれやすいように塗られた薬剤)が全面に付着しています。
これを残したまま塗装すると、全面剥離の可能性もありますので、アセトンやシンナーなどの有機溶剤を使ってしっかりふき取っておきましょう。
この作業が終わったらマスキングの作業に移ります。
自分が考えている艤装や装備をすべて終わらせてから数日間水面に浮かべておき、喫水線の水あかラインが船体に残った所を目標に船底塗料をペイントします。
ただこの新艇の場合に関して提案したいのは、船底塗料を塗る前のゲルコートの表面には、まだワックスが残っています。
この最も滑走する状態(船底ペイントをすれば、やはりそれは抵抗になります)での走行を味わってみてはどうでしょう。
エンジンの慣らしにもなり、船底のワックスを取ることにもなります。
そして、この時に、自艇の耐水速力をしっかりと計測しておき(多ければ多いほど、回数で時間を割れば平均値は正確)メーカー値ではない、自艇の艤装時のオリジナルの基準データが手元に残すことが出来ます。
※この時のエンジン回転数にはくれぐれも注意してください。なにせ、気分も船も最高、イケイケの時ですから。
新艇の場合は、脱型時のワックスがゲルコート表面にまだ残っている場合が多いので、一度船底にサンドペーパーをあてて、軽く表面にキズを付けてから船底塗装をした方がペイントの剥離がなく、船体との密着が良くなります。
マスキングのポイントは、実際の喫水線の5センチほど上にテープを貼っていいます。
どうしてもチャインが前上がりになっているので、マスキング時に惑わされてしまいますが、とにかく水面に対して水平をイメージしてマスキングしてください。
このマスキングの作業で、この後のすべてが決まります。

■中古艇を塗装する場合
前オーナーが上架保管していた艇なら、まずゲルコート表面のワックスも取れているだろうし、喫水のラインも確認できるのではないかと思うので、船底塗料の塗り始めにさほど問題はありません。
ただ、船底のキズにはペイントする前に充分にチェックしておく必要があります。
もし、船底ペイントを塗りながらキズやヒビに気が付いてしまうと大変です。
本来、船底塗料は完全に乾燥させてしまう前に水面に浮かべておくもの。
つまり、下架時期に合わせて、船底塗料を塗り始め、ペイントが終わったところで下架するのが良いとされています。
大きなキズは別として、ここでは問題の無い程度のゲルコートの表面だけのキズのことです。
アメやガラスのように割れたり、欠けたようなキズなら問題は無いのですが、もし、FRPの繊維質が見えていたり、白くささくれていたりしたら、必ず修理してから船底塗装を行って下さい。

■道具を揃える
船底塗装では「手順」が最重要だと前項で説明しました。
決められた手順を淀みなく実行するためには、まず道具を揃えることです。
作業途中に「あ、刷毛を買い忘れた」なんていう事態で作業を中断することは避けたいものです。

今回の作業で使用した道具は次の通りです。
スケラー(フジツボを落とす金属ヘラ)、マスキングテープ(20〜30ミリ幅)、ローラー(大きな面積を効率よく塗装する)、刷毛(細かい部分の塗装用)、トレー(ローラーが入る大きさのトレー)、サンドペーパー(#150〜200耐水ペーパー)、スポンジ(堅い部分のある大きめのもの)、ブラシ(洗車用でホースの先に付けるタイプ)、ホース(水洗いに使用)、ビニルシート(塗料が地面に落ちないように)、撹拌棒(塗料を撹拌する)、ドリル(塗料撹拌の効率アップ)※、撹拌スクリュー(ドリルに付けて使用)※、ジェットホース(水洗いの効率アップ)※、サンダー(サンディングの効率アップ)※。
(※印はあったら便利なもの)

上から撹拌棒・撹拌スクリューを装着した電動ドリル、下段左から刷毛・ローラー 左上からローラーとセットになったトレー・マスキングテープ 、右上からサンドペーパー・スケラー・刷毛
上段左からスケラー・サンダー・耐水ペーパー
下段左からブラシ・スポンジ


船底塗料は揮発性があり、人体に有害な物質が含まれています。
それらは目や鼻、耳といった人体の穴という穴から侵入する可能性があるので、作業時の服装には十分気を遣わなければなりません。
まず、顔。
ゴーグルで眼を、防塵マスクで呼吸器系を、耳栓で耳をふさいで、有毒物質から守ります。
頭には必ず帽子をかぶります。
そうしないと、サンディング時の粉塵で真っ白になってしまいます。
服装は長袖・長ズボン。できれば写真のような繋ぎの作業着がいいでしょう。
水を大量に使うので長靴で臨むことをお勧めします。
夏場の炎天下ではかなり厳しい服装なので、晴れていて、なおかつ涼しい日を選ぶのが賢い方法かもしれません。

■自己消耗型と高硬度型
私たちが「船底塗料」と呼んでいるものは、正式には「船底防汚塗料」のこと。
一般的に塗料と聞くと、ペンキのように色をつけたり艶を出したりする化粧用の塗料をイメージしますが、船底塗料の目的は化粧ではなくズバリ「防汚」です。
ここでいう「汚」とは、フジツボや貝類などの水棲生物のこと。
つまり、船底塗料は水棲生物の付着を防ぐ、防虫剤のようなものなのです。
船底塗料のメカニズムは、フジツボや貝類の嫌う成分、つまり「防汚剤」が少しずつ水中に溶け出すことで、防汚効果を発揮するというもの。
この防汚剤を水中に放出する方法で、塗料は「自己消耗型」と「高硬度型」の2タイプに分かれます。

自己消耗型の塗料は、防汚剤とともに塗膜事態が溶け出していくというもので、溶解時には付着物をいっしょに流してしまうというもの。
塗り替え時期には、塗料自体もほとんど溶けてなくなっています。

一方、高硬度型は塗料自体は溶解せず、含有される防汚剤だけが少しずつ浸み出してくるタイプのものです。
ですから、塗り替え時期が来ても塗料はそのまま残っていますが、その塗料は抜け殻のようなもので防汚効果は失われているのです。
一般に、海に出るのは週末だけというような係留時間の長いプレジャーボートには、係留時の小さな波でも溶け出していく「自己消耗型」が、反対に毎日稼働している漁船や、高速で走行するボートには「高硬度型」が向いていると言われています。

■FRP用と金属用
また、船底塗料は船底のようなFRP用と、スクリューや排水ドレンなどの金属部分に使用する金属用に分かれます。
一般的に、FRP用の塗料には防汚剤として重金属類が含まれている場合が多く、これを金属部分に塗布すると電蝕を起こす可能性があるため、金属部分には重金属類を含まない専用の塗料が用意されているのです。

 
■水棲生物の付きやすい部分

船を上架してみるとわかりますが、フジツボの付着し具合が一定ではないことに気づくはずです。
フジツボが多く付着しているのは、チャインのエッジやドレン部分など主にボトムの凸部分で、平らな部分にはそれほど付着していないものです。
これは、ボトムラインから突出している部分は、走行時により強い水流を受けるため塗装の溶解が平らな部分より早く進行しているから。
塗料の溶解により防汚効果の弱まったところから順に水生植物が付着した結果なのです。
これを見ると船底塗料の効果を改めて実感するわけですが、ただ感心しているだけでなく、ここからひとつの教訓を読みとることが大切なポイント。
塗膜の剥がれやすいところ、つまり強い水流を受けやすい部分には、他のフラットな部分より分厚く、より丁寧に船底塗料を塗布することが、防汚効果をできるだけ均一に保つためのコツなのです。
また、水生植物の生態を知ることも無駄にはなりません。
左上の図のように、日本の水棲生物の多くは7〜8月に繁殖期を迎えます。
ですから、この繁殖期の前後1か月前に塗布するのが最も効果的というわけです。

■金属部分の塗装
前項で説明したとおり、通常の船底塗料には防汚剤としての重金属類が含まれており、金属部分に塗布すると電蝕を起こす可能性があります。
そのため金属部分には専用塗料を使用し、作業も別工程で行います。
マスキングの段階で、船底に存在する金属部分(排水ドレン等)は塗料が付着しないようにマスキングしておき、船外機やスクリューなどの金属部分にも船底塗料が付かないように配慮します。

金属部分の塗装は、船底塗料の塗布が完了しある程度乾燥した段階で行います。
金属部分はスクリューやキングストン内部など、入り組んだ形状のものが多いので、スプレータイプのものを使用します。
金属用塗料がFRP部分に付着しても問題はありませんが、色が違う場合は目立ってしまうので、段ボールやマスキングテープなどで金属部分以外に付着しないような配慮をしてスプレーを吹き付けます。
この場合も、塗布〜乾燥〜塗布と2層塗りを行うと防汚効果が長持ちします。
ボトムの金属部分は、船底塗料を塗布する前にマスキングしておきます。

船底塗料が乾いたらマスキングを剥がし、厚紙でドレンと同径の円筒を作り、周りにスプレーが飛ばないように金属専用塗料をスプレー。

こうすればドレンの内部部分にも塗料を行き渡らせることができます。


船底の再塗装のコツ
前回の塗られている船底ペイントが貝落としをした後でも下地として適当だと判断したら、その上から再塗装しても構わないでしょう。
その際、マスキングテープは前回の船底塗装のラインの1cm位上にマスキングし、船底塗料を前回の塗りぎわに重ねるようにします。
ただ、下地に問題があると判断した場合は、出来る限り、前回の船底ペイントはサンダー等で落とし、アセトン等で船底を拭き、プライマーを下塗りしてから船底塗料を塗り始めましょう。
抵抗となって杭を押し倒してしまうことだってあり得ない話ではない。
常にボートがどういった状態で係留されているかをチェックして、状況に応じて、それなりの対策を講じるようにしたいものです。
また船首と船尾の喫水の差(トリム)に船底ペイントのラインが合っていれば見た目にも綺麗ですが、このラインが傾いているような時は、再塗装の時に少し修正しておくと良いでしょう。
この船底ペイントのラインによって早期に浸水の有無などや船体の異常が知る目安とすることも出来るのです。




前のページに戻る