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◆プロが答えるエンジンメンテナンスのあれこれ 先日このような相談をお受けした。 船齢15年の2機掛けエンジン船で、右側のエンジンだけ回転が低下するのは、エンジン製造時の欠陥ではないかとのご指摘であった。 これについて、みなさんはどうお考えでしょうか。 さて今年もわかりやすい説明を心がけ、マリンエンジンのメンテナンスの疑問点を解説していきましょう。 『同じ条件で使用してきたエンジンが片方だけ故障するのは、使用者責任ではなく製造者責任である』といった見解のオーナーさんがいた。 整備の時期が到来しているとご説明しても、なかなかご理解いただけず、いたらないエンジン屋の説明を申し訳なく思うことがあった。 そんなある日のこと、初笑いで吉本NGKに桂三枝師匠の落語を見に行くチャンスがあり、作品中、医者と患者のおじいさんの話しの中で実に面白いくだりがあったのでご紹介しよう。 じいさん 「先生に言われたとおり、酒は1日1合、タバコは2本を守るのが辛くて・・・」 医者「おじいちゃん、もう年なんだから体を労わらないと・・・」 じいさん 「お酒の1合は楽しみなんじゃが、いままで吸ったことのないタバコを2本吸うのが辛いんじゃ〜」(笑い) 医者「ところで最近、体の具合はどうですか?」 じいさん 「右足の間接が痛いのじゃ〜。なにが原因ですかいの?」 医者「そりゃ90年も使えば痛くもなるものですよ。原因は足の老朽化ですよ」 じいさん「ではなぜ同じように90年使った左足が痛くないのかのう?」 医者「心配しなくてももうすぐ左足も痛くなるから…」(笑い) 先ほどの左舷機は心配しなくてももうすぐ回転が落ちてくるでしょう。 エンジンメンテナンスQ&A Q1 寒冷地ではディーゼルエンジンに使用する燃料の軽油が凍ることがあると聞いたのですが本当にありえることでしょうか? A1 ありえます。 軽油の氷点は-18℃前後で、日本国内においては真冬の北海道で稀にある現象です。 極寒地を航行する南極観測艇などに使用する燃料は Specific Arctic fuel と称する-40℃まで凍らない特殊燃料を使用します。 簡易的に軽油の氷点を下げるには kerosene(灯油)を混合する方法がある。20%混合すると-22℃、50%の混合で-28℃まで対応可能ではあるが、燃料噴射装置やインジェクターへの悪影響を考えるとあまりお勧めはできない。 心配しなくても本誌読者のオーナーは氷点下の気温で船には乗らないと思いますが・・・ Q2 寒冷地ではディーゼルエンジンに使用するエンジンオイルが凍ることがあると聞いたのですが本当でしょうか? A2 実際にエンジンオイルが何度で凍るかは添加剤によって異なるでしょうが、温度が下がるとオイルの粘度が高くなり、エンジンの始動は困難になります。 航行中のエンジンオイル温度は90℃以上に達するため、外気温に関係なく凍る心配はないが、本船に搭載されている救命艇などのエンジンオイルは凍結対策を施している。 エンジンオイルヒーターと冷却水ヒーターを搭載し、母船より電源供給をし、緊急時のエンジン始動に24時間備えている。 レジャーボートのエンジンにもメーカーによっては冷却水ヒーターの設定がオプションであり、陸電のAC電源で冬場のエンジンブロックを凍結から守る優れものだ。 Q3 ディーゼルエンジンの場合、燃料の温度が高いほうが燃焼しやすく、エンジン出力が高くなると聞いたのですが本当でしょうか? A3 答えは全く反対です。 燃料温度が高いとエンジン出力は低下します。 真夏の猛暑でエンジンのパワーが頼りなく感じるのは、吸入エアーの密度が低いため、燃焼に必要な酸素の量が不足するのと、もう一つの大きな理由は燃料温度の上昇です。 陸上試運転でベンチテストを実施すると明らかですが、燃料温度が30℃を超えた時点でエンジン出力は低下します。 冷却海水を利用したフューエルクーラーの設置が理想的です。 Q4 エンジンルームが浸水し、エンジンが半分くらい浸かってしまいました。 バッテリーを交換すれば問題なく始動したのですが、このまま使用しても大丈夫でしょうか? A4 最近エンジンルームの浸水事故が増加傾向にあります。 船底ドレーンの閉めわすれなどの典型的な原因に起因する事故の発生率はいままで通りですが、冷却水ホースの亀裂やスターンチューブの整備不良といった船の老朽化と整備不良が原因の浸水が増加の一途をたどります。 雨水の浸水と海水の浸水とに分かれますが、後者の発生率が圧倒的に高いようです。 まず外観的な処置から始めるとするとスターターとオルタネーターは無条件に交換です。 分解整備で潮抜きをし、一時的に使えたとしても、近未来的に高確率でトラブルが再発します。 各種メーター関係のセンサーや電気パーツを結ぶワイヤーハーネスパーツは交換をお勧めします。 電装品以外の周辺パーツは出来る限りの清水洗浄と油分を含んだウエスでの拭き上げを行い塩分の除去をします。 エンジン内部まで海水が混入した場合は、エンジンを陸上げしてオーバーホールをするのが基本になりますが、予算の都合上どうしてもオーバーホールが出来ない場合は、エンジンオイルを何度も交換する要領で、エンジン内部のフラッシングを行ないます。 無負荷回転のフラッシングを複数回おこなったあと、排出したオイルから水分が無くなったのを確認後、負荷運転でさらに2回ほど行います。 何度フラッシングをおこなっても、確実に水分は残留することをお忘れなく。 Q5 45フィートの係留艇です。冬場はバッテリー上がり防止のため、すべてのバッテリーターミナルを外して保管しています。 特に問題はありませんか。 A5 エンジン始動用専用バッテリーはターミナルを外しても別段問題はありませんが、アクセサリー用のバッテリー端子を外してしまうとビルジポンプが作動しなくなります。 冬季点検終了後、全オートビルジが作動することを確認したうえで船をはなれるように心掛けてください。 比較的新しいエンジンで、燃料噴射装置が電気コントロール式を採用している場合、常時電源の供給を必要とするタイプがあります。 ご自分のエンジンタイプを十分ご確認のうえ、昔のディーゼルエンジンの概念は捨てて整備を行いましょう。 Q6 エンジン修理の相談や部品の注文をする場合に、細かな内容をいろいろと質問されました。 自社で販売したエンジンや船体の情報をこまかく聞くのはプロとして恥ずかしいことではないでしょうか? A6 ごもっともで厳しいご意見です。 しかし最も正確な情報やアドバイスを差し上げるための手段であることをご承知ください。 オーナーがお乗りの船種が判明しても、ガソリンエンジンなのかディーゼルなのか、途中で換装されているかはじめのままなのか、何年前に購入または製造されたものなのか、そのトラブルは最近発生したのか以前から問題があるのか、電話でお問い合わせの場合、オーナーからの情報だけが頼りでトラブルシュートや部品の限定を行なっています。 『わしの船』以外の情報を、医師の質問に一生懸命答えるようにお答えください。 宜しくお願いいたします。
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