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                           中古艇のネット取引について
     2006年 8月 29日
記事: ミズノマリン 水野 茂
この記事は2005年9月ボート月刊誌に掲載された情報です。

「中古艇のネット取引にまつわるメンテナンスについて考える」

インターネットビジネスの急成長で商品売買の形態が大きく変わりつつある。
クレジットカードの普及と宅配便の全国制覇とが相まって、店舗に出向くことなくあらゆる商品が安価で購入できる時代が到来した。
もちろん売り手あっての売買で、ネットオークションに出品すれば個人の持ち物でも世界に向けて販売が可能である。
最近のボート雑誌で『売りたし買いたし』のコーナーに出品するボートの数が激減しているのにお気付きの読者もおられることでしょう。
この現象は中古艇の売買が衰退したのではなく、多くの情報がネットマーケットに流れた結果と筆者は考察する。
今回はプレジャーボートのネット取引について考えよう。


先日、中古艇のエンジンコンディションを調査する依頼があり、出品艇が保管されているマリーナに出向いたときの事、中古艇をネットで取引されている業者の方とお話しする機会があった。
礼儀正しさと愛想のよさから好感の持てる人物像で、短い時間ではあったが話がはずんだ。

彼のお話を聞くまでの筆者の考えはこうだった。
完成度が高くクレームの要素の少ない電化製品や遠方で入手が困難な地元の特産品、書籍やCDはネット販売に向く商品で、故障がつき物で高額商品の中古艇は、しっかりした業者が売り手と買い手の間に入り、双方の理解を得た上ではじめて取引が成立する商品といった位置づけであった。

ネット業者の方の考えはこうである。
「我々は中古艇を扱うブローカーではなく『情報』を売買するビジネスです。」
実に明快なお答えであった。
売り手のご希望金額をサイト配信し、買い手が閲覧して興味があれば船まで案内をする。商談が成立した場合のみ情報手数料を売り手から徴収するといったシステムだ。
 
売船希望のボートオーナーが買い取りディーラーに依頼すると、再販のためのメンテナンス費用やストックの経費、ディーラーマージン等が考慮されマーケット相場より数十パーセント安い価格での取引となってしまう。
ネット取引、すなわち個人間売買の場合、ディーラーの中間マージンの節減といった部分ではメリットがあるがプロの目を通さずに高額商品を取引するわけですから当然リスクも自分持ち。
メリットとデメリットを十分理解したうえでの取引が必要でしょう。

■ネット取引のメリット
売り手側の希望金額が自由に設定でき『この価格で売船可能なら・・・』といったダメモト販売が可能である。
また船を使用したまま出品できるので手放すタイミングも自由にコントロール出来る。
雑誌広告とは違い情報の発信先が全世界向けで購入希望者の目に届く可能性が格段に高くなる。
 
買い手側のメリットとしては情報量の多さと比較検討の容易さ、情報入手の手軽さ、月刊誌とは違ったタイムリーな情報を得られることなど多方面に及ぶ。営業マンの強引な営業に会う心配もなければ情報を閲覧する楽しさもある。
個人名義艇を買い受ける場合、消費税が発生しないのも大きなメリットといえるだろう。

今回ネットで船を捜された方は鹿児島のオーナーで、「近くにマリーナや中古艇を展示しているような販売会社もないロケーションで、唯一中古艇を捜す方法はネットしかないのです」とのお話でした。
売り手と買い手のニーズがネットマーケットで賑わいを見せているのは間違いないようです。

■ネット取引のデメリット
優良ディーラーが自社のホームページから配信する中古艇情報とは異なり、個人間売買を主とする情報サイトでは、すべてのリスクを買い手が受け持つことになる。
中古艇のもつ故障箇所を売り手側も気づかずに取引が成立し、購入後に膨大な整備費用が発生するケースも現実問題多々あるようだ。

年式と航行時間のみで船の価値を判断し、水没した艇を気づかずに購入したケースも身近にあった。
売船を決意した船は、不良箇所はもちろんのこと、定期的に実施してきた点検、整備もパスするケースがほとんどだ。
売買船体価格のほかに初期整備費用、輸送費、名義変更や検査費用など、必ず発生する費用をあらかじめ予算組みしておく必要があるでしょう。

個人間売買で船舶を購入する場合は、普段お付き合いのあるボート屋さんか信頼のおける業者さんにコンディションの点検を依頼するように心掛けましょう。
特にエンジンが要注意で、エンジントラブルをきっかけに乗り換えを決意された中古艇の修理費用は時として船価を超えることもありえます。
入念なチェックが必要です。
売買にまつわる後のトラブルを避けるための必須アイテムとお考えください。

エンジンの整備費用が時として中古艇の価格を上回ることもある。
購入前にはプロの判断を仰ぎたいものだ。

船齢が10年を超える船はターボチャージャーのコンディションが気になる。

中古艇購入時のもうひとつのポイントがアウトドライブだ。
エンジン同様コンディションチェックは入念に…


今回サーベイを実施したレポートをネット取引のご参考に添付します。

中古艇サーベイレポート
○○ ○○ 様
点検年月日   : 平成17年6月29日(金)
点検場所    : ○○マリーナ
点検艇種    : ○○○ 艇
エンジン型式  : VOLVO PENTA AD41D 
アワーメーター : 左舷757時間  右舷755時間 
作業担当者   : 水野 茂

エンジン&アウトドライブ関係
●エンジンはAD41の最終モデルより1世代前に製造された1992〜1993年製造の41Dモデルを搭載しています。

●始動前点検でフロントプーリー周辺に錆損傷を確認する。
錆の程度は酷く、実際の購入に当たっては両舷のクランクプーリー、オルタネータープーリーが損傷しており交換が必要。

●オイル量、質、冷却水の量は良好。

●アウトドライブは290DPモデルでは新型モデルに相当するUS91モデルが搭載されており、排気管の口径が4.0インチ、アスタンロックも新型を採用している。
船底塗料の塗布はなく進水以来、上架にて保管されていたと思われます。

●左舷フロントプロペラに曲損があり交換が必要です。

●エンジン冷間始動時の点検では、両舷機とも始動良好。
始動直後のエンジン振動や、海面の汚濁もなく良好。

●右舷機より異音が発生しており、音質と音源から推測してオルタネーターのベアリングの不良と思われます。

●海上試運転におけるエンジンの状態は微速、中速、高速、加速時、減速時、いずれも異常な排気色はなく燃焼状態は良好。
水温、油圧共に良好。
前記の右舷機異音及び左舷プロペラ曲損に起因する中速域での振動は要修理です。

●ドライブは前進、中立、後進、直進航行時、転舵時、いずれも良好ですが、運転席のトリムアングルメーターに指示不良があり、表示ではマイナスアングルを指示していたにもかかわらず、実際のアングルはプラスポジションにあったため、試運転中に船体がプレーニングしないというハプニングがありました。

●FB及びロアーステーション共に誤表示作動していたことから、原因はドライブ本体船内側上部にセットされているチルトアングルセンサー系統の不良と推測されます。

●左舷機タコメーターの作動が悪く、FB、ロアー共に同じ症状が発生していることから推測して、原因は回転数信号を発信するオルタネーターのW端子出力不良と思われます。
フロントプーリー廻りの錆損と一連の故障でしょう。

●トップ回転は波高が高く、ハンドタコテスターによる実測は不可能でしたが、タコメーター回転数は定格3800rpmに対しており、エンジン内部の性能は概ね良好と判断します。

問題点
1. 両舷フロントプーリー廻りの錆損              要交換
2. 左舷フロントプロペラの曲損                要交換   
3. オルタネーター 左舷ベアリング、右舷発電不良   要O/Hか交換
4. 右舷トリムアングルセンサー周辺不良         要交換
5. 左舷冷却水リザーブタンクステー不良          要交換
6. 両舷エアークリーナー不良                要交換

船体及び電装品、備品関係
●中古市場にある○○○艇の中では比較的高年式で致命的な損傷はなく比較的美艇といえるでしょう。

●船体の左舷喫水部及びチャイン部に全長約3mにわたり、ゲルコートの刷毛塗り簡易修理の痕跡があり、再度修理の必要がありそうです。
各電装品、備品とも大きなトラブルはなく概ね良好と判断します。

●サロン船底やエンジンルームにも浸水形跡や過度のビルジもなく良好。
エントリードアーやスカイハッチ、天井等からの雨漏れや海水の浸入もなく良好です。

問題点
1. FB航海計器設置場所のカバーの損傷   要交換
2. 左舷喫水部及びチャインの修理痕     要再修理

総評
中古艇の購入を検討する上で最も重要なエンジンのコンディションは、要整備箇所はあるものの基本的には良好です。
現オーナーが乗り換えをお考えの船は例年実施していた整備でさえ割愛する傾向にあり、おそらく最近は整備を実施されていない状態と思われます。
現状のエンジン不良箇所を整備するには両舷で概算60万円程度と、船体補修で約30万円の費用が発生します。
 
優良販売業者より中古艇を購入する場合は、あらかじめ販売段階で不良箇所を整備したうえでの価格設定をしますが、今回のようなネット販売や個人間売買のようなケースの場合、全くの現状渡しが一般的な取引となります。
表示船価に購入直後の整備費用を加算した価格が購入価格と考えるべきでしょう。

本艇はこのクラスには珍しく主機駆動タイプのエアコンを装備。
新たに設置すると100万円を超える商品の設置は中古艇の付加価値といえるでしょう。
 
○○○○艇は台湾の造船所で建造しており、内装のデザインはウッドベースで仕上げています。
国産の○○丸艇などと比較すると、好き嫌いがはっきりしてしまう船なので再販時には若干ハンディーがあるようです。
 
高年式を考慮すると整備費用を加算しても決して高値ではないですが、あとは好みとフィーリングの問題といえる1艇でしょう。
多方面からご検討のうえ判断してください。


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