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新艇船価の1/3を占めるといわれるマリンエンジン。 海の上では頼りになる存在だが、機械物が大の苦手なオーナーにとってはミステリアスな存在だ。 航行中にアラームが鳴ると不安になるし、どの程度の整備が必要なのかもわからない。 中古艇を購入するにも船体の程度は見かけで判断できるけれど、エンジンはやはりミステリアスだ。 今回のミスター・メンテナンスマンはミズノマリンに寄せられた中古艇に関するマリンエンジンと、保険事故修理に対する質問にお答えします。 Q1 中古艇購入にあたり、ガソリンエンジンにしようかディーゼルか迷っています。 ガソリンエンジン搭載艇のほうが価格も安く、予算的に気持ちは傾いていますが…。 A1 同年式、同型艇で比較すると確かにガソリンエンジン搭載艇は安価な価格設定になっています。もちろん新艇価格もガソリンエンジン艇はディーゼルエンジン艇と比べ、リーズナブルな価格設定です。 これはエンジンの単品の価格差で、同馬力比較でディーゼルエンジンはガソリンエンジンの約2倍の価格設定が一般的であることからの価格差とお考えください。 ガソリンエンジンのメリットは安いこと、静かなこと、軽いこと、排気ガスが臭くないこと。 ディーゼルエンジンのメリットは燃費が良いこと、寿命が長いこと。 購入時は高額だが、ランニングコストを考えるとディーゼルが断然有利といえるでしょう。 年間使用時間が1000時間を越えるような業務艇にカソリンエンジンを採用しないことからもご理解いただけると思います。 同型艇比較でデーゼル艇の燃料のコストはガソリン艇の約1/3の計算から、年間使用燃料量の試算と航続距離を考慮し、沖合いでの信頼性を加味し決定されてはいかがでしょうか? 使用目的が近場の釣りで、年間運転時間が50時間程度ならガソリンエンジンでも充分です。 Q2 中古艇購入時のエンジンのコンディションはどのようにチェックすればよいですか? A2 エンジンコンディションのチェック項目は果てしなくありますが、要点をかいつまんでお知らせします。 まずはエンジンの外観を見渡し大きな錆や変色、水漏れ、オイル漏れがないこと。 いままでの使い方が、整備習慣のあるエンジンなのか、乗りっぱなしの売り逃げかを見極めることがポイントといえるでしょう。 普段から整備しているエンジンは客観的ですが見た感じ不安のないものです。 次に試運転は必ず実施すること。 中古エンジンの場合、暖機運転をしていない状態の朝一テストがポイントで、上架保管艇の場合はまず上架状態で船底、船尾関係をチェックしてから下架をしてエンジンの冷間始動点検を実施しましょう。 不調エンジンでも一度暖機運転をすると、始動、排気煙共にコンディションが回復してしまい、正しい良否の判断が出来なくなってしまいます。 試運転時のチェック項目は、各回転域での排気煙の状態、異常音、振動とエンジンスペック通りの最高回転が回るか否かを点検します。 最高回転に達しないエンジンは、プロペラのミスマッチを含め、何らかのトラブルがあるがあると推測できます。 試運転時にはメーター関係をチェックし、最高回転航行時のエンジン油圧で300〜500kpa、水温で85℃前後が正常値です。 エンジン整備歴のわかる資料が搭載されている中古艇は、グレードが高く安心です。 Q3 エンジンの壊れた中古艇が格安で入手できそうです。 船体のみを購入するつもりでエンジンを換装しようと考えています。 いかがなものでしょうか? A3 エンジンが正常に作動して、はじめて船としての価値が認識されます。 おそらく販売者側は故障エンジンの何らかの復旧を試みたが、修理費用と中古市場価格のバランスがとれないことから現状渡し「エンジン無し」での販売が妥当と判断されたと推測されます。 エンジン無しの中古艇価格は世間相場として無いに等しいため、あとは購入者ご本人の価値観となりますが、アイデア的には賛成です。 エンジン換装工事の依頼で最も多いケースは、ワンオーナーで長く愛艇を所有されている方が、老朽化したエンジンに不安を持たれ、新型モデルのエンジンに換装されるケースです。 「昔の船は造りが良い。乗り換えるつもりは全くないよ」が、総称したご意見のようです。 仮にですが、エンジン無しの中古船体が¥100万、新品エンジンが換装工事込み¥300万として、同型、同年式艇が¥400万ならエンジンが新品の分、完全にお得だし、同型中古艇が¥300万としても、現コンディションと後の整備ランニングコストを考慮すると新品エンジンがお得でしょう。 Q4 航行中にエンジンの焼け付き事故が発生しました。保険に入っていたつもりが、保険ではカバー出来ないといわれ予期せぬ高額な出費となりました。 どのような事故が保険の対象となりますか? A4 ご加入の保険がどのような内容かによりますが、「保険」にはさまざまなグレードがあります。 一番安価な保険は、特約なしの「ヨット、モーターボート総合保険」で、保障の内容は賠償責任、搭乗者障害、捜索救助費用を担保するもので、主に他人にご迷惑をおかけした場合にのみ支払われる保険。 自動車保険の対人、対物、搭乗者保険にあたる内容です。 事故の発生率が低いことから保険金額も安い設定となっており、ボートのサイズにもよりますが¥3万前後の保険料で加入できます。 特約として船体保険を担保すれば、衝突や着岸ミスで船体をぶつけた場合でも自船の保険修理が可能となりますが、保険料は一気に数倍に跳ね上がります。残念なことに船体保険にまで加入してもエンジンの焼け付き事故やプロペラ、アウトドライブなどの推進器に関しては保険の対象外です。 事故発生率が極めて高く、なおかつ修理代金が高額なアイテムに関しては通常の保険では担保されないのが一般的なので、ご注意いただきたいものです。 どうしてもエンジンの焼けを含むオールリスクを保険でガバーしたい場合は、動産総合保険に加入し、特約でエンジン焼けつき損害と推進器損害を担保する方法がありますが、基本的には引き受けしない保険会社が多いようです。 マリーナの団体保険やボート販売会社の団体保険で一部取り扱いがありますが、保険料はかなりの高額となります。ご質問の内容で察するところ船体保険には加入していたが、エンジンの焼けつきに関しては不担保であったか、事故ではなく単なる故障の発生であったことが推測されます。 Q5 愛艇のエンジンが故障し、中古エンジンの購入を検討しています。 購入時の注意点をお知らせください。 A5 中古エンジンのメリットは安価な価格にありますが、重大なデメリットは信頼性に欠けるところにあります。 中古エンジンが市場に出回る経緯を考えてみよう。 一番多いのが、不調につき新しいエンジンと換装した下取り機が市場に出回る場合。 うっかりこのような中古機を無整備のまま購入し、愛艇に搭載してしまうと前オーナーの不安と悩みをそのまま受け継ぐ結果となります。 船速アップが目的で、ハイパフォーマンスエンジンに乗せ変えるケースの下取り機はねらい目ではあるが、不景気の昨今、なかなかそのような出物は市場に出てこないのが現状です。 エンジン寿命は船体寿命の半分であることからご理解いただけるように、中古エンジンの市場のバランスは「売り手市場」の傾向が強いようです。 中古で出回るエンジンには、前艇から引きずり下ろされた「何らかの理由」があることを充分ご理解されたうえでの購入が大切です。 出物のエンジンがあれば私もほしいので、ぜひご紹介ください。 Q6 エンジン換装をする場合、どこのメーカーがお奨めですか。 A6 新艇を建造する場合も同じ悩みを持ちますが、エンジンの選択は楽しみながら悩むショッピングです。 たとえば今お使いのパソコンが古くなったので電気屋さんに新しいものを買いに行ったとします。 MacかWindowsか、ノートかデスクトップか、基本選択肢はご自分の用途によってすでに決定しているはずです。 概算の予算が決定していればあとはスペックと商品イメージになりますが、こだわりを抜きにした日常操作においての粗悪品は店頭には並んでいません。 マリンエンジンの選択も少々乱暴ではありますが、それなりのスペックを満たした商品しか市場では生き残っていないのです。むしろ購入後のパーツの供給率や保障の内容、アクセサリーの充実度、エンジンメーカーのマリン市場に対する心意気が重要な選択肢になると考えます。 ただどこのメーカーも馬力帯により「得て、不得手」があるのは確かです。 ご使用用途と馬力からそのレンジが得意なメーカーをチョイスし、面倒見のよい業者から購入しましょう。 Q7 エンジン焼けつき担保の保険に加入していたのですが、いざエンジンが焼きついて、修理代金を保険請求したところ¥200万の費用に対し¥90万の支払いしかなく残りの¥110万は自費負担になりました。 納得出来ないのですが…。 A7 支払い金額の減額には、おおまかに2種類の理由が考えられます。 まず保険契約時に船体の価格をいくらに設定したかが問題です。 保険の考え方は保険の目的(船価)に対して料率(1000円に対して契約内容により数十円で決定)を乗じて保険料を決定します。 たとえば¥1000万の中古艇に、エンジン焼けつき担保の特約をつけて料率¥50で契約した場合、¥1000万×50/1000=¥50万が年間の保険料となるわけです。 ところが安い保険料で安心を買いたいのが人の常で、¥1000万の価値がある船を¥500万で購入したと偽って年間¥25万の保険料しか支払わなかったとしましょう。 そこで実際の事故が発生し、検定会社が被害状況を鑑定する折に実際の中古艇取引価格を調査したところ¥1000万であることが発覚した。 そういった場合は、保険目的の半額分しか保険料を支払っていないことから、被害認定金額も半額しか支払われない(保険用語で比例担保と言う)結果となってしまいます。 財産を守るために加入したはずの保険が、小細工をした分、しっぺ返しが来るケースです。 もうひとつの減額理由は減価償却の考え方です。 たとえば船齢10年のエンジン事故修理費用¥200万の内訳が工賃¥100万、部品代金¥100万と仮定します。 工賃に関しては現時点の価格でそのまま計算されますが、事故により故障した部品はすいでに10年使用しており、保険の概念では¥100万の価値はないものと判断します。 新品価格¥100の消しゴムも半分使用していれば¥50の価値もないのと同じ考え方です。 10年使用した中古部品を新品部品に取り替えた場合(保険用語で新旧交代工事と言う)、¥100万のうち最高¥60万は減額の対象となり、認定価格より差し引いて支払われます。 工賃¥40万、部品¥160万の+事故で減価償却率0.4を乗じると¥40万+(¥160万×0.4)=¥104万。 ここからさらに免責金額¥10万を引くと、総額¥200万の事故で保険より支払いいされる金額は¥94万で残金はオーナー負担となってしまいます。 保険に加入していてもエンジンの焼けつき事故に関しては安心出来ないのが現状です。 Q8 古い愛艇の座礁事故でプロペラとプロペラシャフトが損傷しました。 プロペラとシャフトを交換して¥100万の修理費用のうち保険では¥36万しか担保されません。 不景気の昨今、自己負担が厳しく船を売却するしかないでしょうか? A8 修理費用の大半が部品代金のケースです。 ペラとシャフトの交換工賃が仮に¥10万とすると部品代金がプロペラ¥65万、シャフト¥25万で原価償却率0.4、免責¥10万で¥36万が保険より支払われる金額です。 プロペラやシャフトのようなJCI検査の対象となる部品は座礁事故の場合、本来は交換をすべきですが、プロペラメーカーに相談し新品価格以下の値段で修理が可能であれば保険の支払い対象となります。エンジン事故の場合でも交換部品の点数を極力減らし、可能なものは修理して使う努力をすれば負担金額を軽減することが可能です。 修理の完成度と安全性を下げることなく、保険の概念を理解したうえでの作業内容の決定で、なんとか船の売却は逃れたいものです。 ● ● 保険に加入して対外的な責任を果たすことと、ご自身の財産を守ることは船長としてもちろん大切な義務です。 しかし保険に頼るのは万が一の事態であり、事故を起こさないための点検と整備は必ず実施するよう心がけたいものです。 正規のオーバーホールを実施したエンジンは資産価値が上がったものと判断し、保険継続時に申告すれば原価償却は0%からスタートすることを付け加えておきましょう。
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