前のページに戻る



 2006年 7月 17日
ボート月刊誌より
バッテリーの種類と特徴
ボート月刊誌2003年1月掲載

新世代船外機の発電量は、ボク達の予想を遙かに上回るものだった。
低速回転域から高い充電性能を示し、使い勝手は飛躍的に改善された。
今回はその改善された充電性能を上手に受け止め、必要に応じて電力を供給してくれる「化学のバケツーバッテリ」。
限られた電力を効率よく使い、快適なボートライフを支える発電機と並ぶ、もう一つの重要なElectric Equipmentの構造と特性について考えたい。

◆鉛バッテリはこんな部品で出来ています。
「極板」
 極板は、合金製の格子(図参照)と活物質(ペースト)に分かれます。
「格子(グリッド)」
 格子は発生した電流の導体であり、活物質の保持をする役割も果たします。主な製造法は鋳造式とエキスパンド式に分かれその形状も用途に合わせ、起動電流重視型又は耐重負荷能力重視型等に分かれています。格子の材質は、標準型ではPbーSb系(鉛ーアンチモニ)が使われ、補水不要型にはPbーCa系(鉛カルシューム)が使われます。
「活物質(ペースト)」
 鉛蓄電池の極板は、正極ー二酸化鉛・負極ー鉛です。格子の形状をどのように工夫してもその表面積は狭小なので、面積を獲得するために金属鉛と一酸化鉛の粉末に添加剤を加え希硫酸で混和し熟成化成することにより製造されたペースト状活物質を格子の間に充填して使用します。
「隔離体」
 隔離体は、隔離板(セパレータ)とガラスマットに分かれます。
「隔離板(セパレータ)」
 隔離板は正極と負極間の接触短絡防止が主な使用目的ですが。化学反応に必要なイオン導電性が良好で、且つ電気抵抗が小さいことなどが求められます。通常は薄板状ですが、サイクルバッテリに多いクラッドタイプの正極等では袋状に成形されて使われます。制御弁式(シールドタイプ)では電解液保持の役目も担います。材質はポリエチレン繊維とシリカ粉末や極細硝子繊維などを、紙状に成形して使用します。
「ガラスマット」
 正極活物質脱落防止と、放電時に生成される水の拡散が主な役割。直径約20μの硝子繊維を積層接着して用います。
「電解液」
 電解液で使用する希硫酸の純度は、JIS K1321で規定されています。
 液温20℃で、比重1.280の条件では希硫酸含有量は37.1%(重量比)となります。電解液に不純物を混入すると蓄電池の性能と寿命を低下させます。間違っても塩素入りの水道水などを補水してはいけません。


◆旧くて新しい鉛バッテリの選び方
鉛バッテリは、実用化されてから140年余の歴史をもっています。
後発のニッケル水素電池やリチュウムイオン電池など、新技術を駆使した電池類と比較をするとエネルギー密度という点では、性能が劣っているのは確かと言わざるを得ません。

しかし、エネルギー密度以外の要素に目を向ければ、出力特性・利便性・安全性等、総合的に判断すれば鉛バッテリの方が利点が多いことも事実なのです。
特に嬉しいのは、経済性に優れ安価に入手できる点と、用途に応じた性能のバッテリを選択できる点です。

実際に私達の船で考えると、一番重要な性能は何と言ってもコールドクランキキング能力!
せっかく準備して船まで来てれば、バッテリ上がりでエンジンが起動しない。
そんなときに限って晴天無風…、ガッカリです。
一度の失敗は苦笑いですが、2度3度となれば笑ってはいられません。
同じ鉛バッテリでも極板の材質と形状で色々な顔を見せてくれます。

左の表とグラフは極板格子を材質で分けた自己放電量と放置時間を表したものです。
正極・負極ともカルシューム合金を使ったバッテリが最も自己放電量が少なく長期保管に耐えられることが分かります。
一方コールドクランキング能力は格子の形状によって決まります。
右のページの図で説明すれば、電気の出入り口の耳までの距離が短いパワー格子(ラジアルグリッドとも呼ぶ)タイプがもっとも優れています。
多くの場合このタイプのバッテリは補水不要のメンテナンスフリーバッテリになっているので一石二鳥ですが…、もし密閉タイプでしたら要注意です。
三相交流タイプの発電量を搭載している新世代の船外機はほとんど問題ありませんが、古いタイプの発電機が搭載されている船外機はご用心。

密閉タイプのバッテリは、充電中に発生するガスを「負極吸収反応」により内部処理しますが、充電電圧が高すぎると電解液がガス化して排気弁を通り大気中に放出されてしまいます。
電解液が減少したセル内部の極板は露出しバッテリ寿命と性能を著しく損ないます。
最悪の場合は内部に貯留した可燃性ガスに引火爆発の可能性もあります。
一般には充電電圧が15Vを越えず、満充電時の充電電流を電池容量の0.05倍以下に抑える必要があります。
この条件がクリアできれば、エンジン始動用のバッテリとしてはこれに勝るものはありません。

良く船を使う方で、船内で色々な電気機器を使いたい。
あるいは旧型の船外機を使っている。
こういう方には、正極にアンチモン合金・負極にカルシューム合金を使った、ハイブリッドタイプのバッテリで格子材が厚型、ペースト量の多いものが最適です。
ハイブリッドタイプのバッテリは重負荷環境に強く、大きな充電電流を受け入れる能力があります。

ところで、どうしても1年の半分は船は出さんもんネ! というアナタ。
ぴったりのバッテリがありました。
農閑期には使わない長期休止期間OKの農機用バッテリ、振動にも強いので案外船向きかもしれません…、ただネーミングが…、名前は「万年豊作」と言います悪しからず。

バッテリに関しては、まだまだ知っておいて頂きたいことがたくさんあります。また次の機会に。


前のページに戻る