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           セーフティボートコントロール
2006年 11月 17日
ボート月刊誌より
知っていると安全な豆知識
ボート月刊誌 2003年12月号掲載分

最短停止距離…船にはブレーキがないので急には止まることができませんが、プロペラを後進に入れて停止するまでの距離を縮めることはできます。

例えば、一般ボートでは30ノットで航行していたとしてもほぼ停止状態にまで速力が下がるのは機関を中立にしてから70〜80メートルですみますが、半分の5〜16ノットで航行する5000トンの貨物船がプロペラの推力を切ってから自然停止するまでの距離は、4000から5000メートルともいわれています。
これが、50000トンであるとか100000トンの場合であれば6000メートルから10000メートルにも達するものなのです。

船が巡行速力で航行しているときに、高速後進に入れて停止するまでの距離を最短停止距離といって衝突回避や目前の乗り上げ回避をする場合以外には行うことはまずないでしょう。
一般に、普通の商船の最短停止距離はその船の長さのおよそ5倍の距離といわれています。
したがって、ボートなどが万トンクラスの船の前方を横切ろうとしてその正面でなんらかのアクシデントが発生しても1000メートル以上離れていなければ衝突回避のための停止ができないと考えなければなりません。

とくにこのような船においては、舵を切っても数百メートルも走らなければ船の向きが変わらないことや、周囲の海面が狭く避けることにより乗り上げなどの事故が発生すると考えられる場合に、停止すること以外に方法がなければ進路変更で小さなボートを避けることをせず、止むを得ず衝突する(乗り上げ補修などの費用より香典の方が安くあがる)ことだって考えられないわけではありません。

ボートにおいては緊急時といえど実際に急速逆転のようなことはできないし、よしんばできたとしてもエンジンの停止やクランクシャフト、ギヤー破損に繋がることが多いものです。
逆回転して効力があっても、故障やエンジン停止をしたのでは意味がありませんから、スターンドライブ式の船はスピードがかなり落ちてからの方が実質的な効力があります。
どちらにしてもこのような処置は故障覚悟の緊急処置になるでしょう。
自分の船の実質最短停止距離や大型船の最短停止距離をあらかじめ承知しておくことは衝突を回避するためや適切安全な停止をするためにも大切なことです。


波の速力…海底陥没などによる津波の速力は瞬時においては350ノット(時速650キロメートル)にも達するといわれています。

日本近海で、津波警報が出されたらいち早く避難の方法を考え実行に移すことが大切です。
港の形状や港口の向きによっては、湾内に避難することが危険を助長してしまう場合もあります。
風によるうねりの速力は、最大35ノット程度といわれていますが、湾内で発生した波はそれほど速くはなく、この速力は洋上を長く風に吹かれていた時間やそこに至るまでの水深、波の大きさによって一様には言えません。
波は岸に近寄り、深さが浅くなるほど速力も落ちてきますが波長が短くなって波の斜面は急角度になってきます。
ボートなどでは波が高いと、気持ちのどこかに不安があって、ついつい岸の方に寄りたがる傾向がありますが、小型船においては岸に近づくほど揺れが大きくなる傾向にあり、時としては沖合いを航行することの方が波長が長く安全であり、操縦上楽なこともあります。
台風の余波などで大きなうねりのある時などは、陸に近くなるほど波長が短く、深く堀り込んだものになって小型の船では危険といえます。


突風が吹く兆候…突風は瞬くうちに海面が時化て風速が20メートルに達することも稀ではありません。
小型船にとっては極めて危険なものですが、大体はその兆候が認められるのが常です。
突風は、寒冷前線にともなっていることが多く、出航前に天気図を確認して前線の通過と出会う可能性があるときには十分な注意が必要です。
とはいえ、なんの兆候もなく数分のうちに台風のごとく吹き込んでくることがあり、この間にボートが走ることができる距離は数キロメートルにしかならないことから十分な注意が要求されます。
夏では「夕立ちが来そうだな」と思われるようなときに、海上では突風を伴った夕立ちがくることがあります。
一般的に、船に乗る者は次のことによって前線の接近を察知します。
(1)南からの風が急に止んだとき
(2)西空に入道雲が見えたとき
(3)朝、西の空に虹が見えたとき
(4)夜、西の空に稲光が見えたとき
これらに加えて、レーダー観測やウェザーファックスデータを参考にして、より確実に危険を察知します。


天気予報の波の説明…天気予報のなかでいう「やや波がある」「波がやや高い」などという説明は波浪階級表に基づいていますが一般に多くいわれているものは次のとおりです。
(1)さざ波がある…波高が10センチ程度まで
(2)なめらかで小波がある…50センチ程度まで
(3)やや波がある…1.50メートル程度まで
(4)かなり波がある…2.50メートル程度まで
(5)波がやや高い…4.00メートル程度まで
(6)波がかなり高い…6.00メートル程度まで
(7)相当荒れている…9.00メートル程度まで
などで異常な状態とは14メートルを超えるものを言います。

一般のボートで安心して航海できるのは、船長技量によって大きく変わるところですが、「やや波がある」の下限が限度でしょう。
1.50メートルの波といっても、5トン未満船であれば一般の人からみて自分の背丈以上にも感じるものです。
波は、風波、うねりなどによって高さがおなじであってもその性質、エネルギーはかなり異なっています。
ボートに乗っていての目の高さが1メートルくらいでは、感覚的な波高は実際の1.8倍くらいに感じ、目の高さが高い程、この比率は小さくなって眼高が15メートルぐらいからは見掛け上の波高は逆に低く感じられることもあります。


海水ポンプが故障したら…エンジンの海水ポンプが故障するとオーバーヒートをしますが、このような場合には、ビルジポンプを利用して応急的海水ポンプとすることができます。
ビルジポンプの吸入側ホースの先を船の前に向くようにして船の外に出して、排水側をポンプからきているホースが取り付けられている部分に接続して作動させ、ヒートしない程度の速度で最寄りの港に向かいます。

エンジンのメーカーや形式などによってはできないものがありますが、緊急の時にはあらゆる応用方法を講じて対処することを認識しておくことが大切です。
ビルジポンプの作動可能な時間は連続で30分くらいでありますが、連続使用したあとは熱のため機能が著しく低下するので交換するか機能の確認をしておいた方がよいでしょう。
また、ポンプが少しでも加熱しないためには、ポンプをできるだけ薄いビニール袋に入れ、さらにそれを水の入った容器に入れて駆動します。
この時の水の取り入れは、ホースの先端はかならず進行方向に向くようになんらかの方法で取り付け、常時水中になければなりません。


水抜き栓脱落浸水…小さなボートでは船底後部にある水抜き栓が航行中に脱落することがあります。
エンジンが回っているときであれば、こんな時には慌てずに滑走状態で走るのがよいでしょう。しかしながらいつまでも走り続けることはできませんから、船尾の水が切れ、船内の水も流れ出していくからそれから対処方法(ボロ布、道具、作業体制など)を考え準備を整えてから停止し、すばやく作業すれば多くの水を浸水させなくてもすみます。
 夏などで水温が低くない時期であれば、水のなかに入って船外からの詰め物をするのが有効的です。
慌ててただオロオロとしていると水がエンジンにまで達し、エンジンが停止し、一層パニック状態を大きくすることによって対処不可能になってしまいます。
小さなボート(18フィート前後)の猶予時間は、船を停止してからおよそ3分から5分しかありません。
落ち着いて対処するならば、この類の浸水は決して慌てることはないわけです。

気象通報放送…天気予報ではなく、天気概況から始まって天気図の記入のための各地の風向や気圧、天候などがNHK第二放送で放送されています。
放送時刻は、午前9時10分から9時30分、16時から16時20分、22時から22時20分の1日3回および日本短波放送では12時20分から12時35分です。

ロングクルージングのときには天気予報だけでなくこれらを有効に活用したいものですが、自分でもこれらの天気通報放送を聞いて天気図を書けるようにすることが、天気図を読み取るための最短距離です。天気図用紙は学校教材を扱っている文具店でも入手できます。

観音崎の海上安全センターでは、1665キロヘルツで毎時00分からと30分から東京、横浜、観音崎剣崎など各地域の風向、風速、波の状態などを放送しているのでこれを利用することで各航行エリアの情報を入手し、安全航行の重要な資料とすることができます。
また、あわせて大型船の航路への入航時間なども放送しているので、特に霧が出たりしたときには衝突事故防止の上でたいへん役に立ちます。


ガラス割れの防止…荒天時に航行すると船首を波につっこみガラスを破損してしまうことがあります。
沿岸付近では2000トンクラスであっても、ブリッジのガラスが跡形もなく飛んでしまうことがあります。
まして小型のボートがこのような事態に陥ることはあって当たり前です。
防ぐためには、視界が確保できる限界までベニヤ板などで窓枠のうえから覆い、ガラスを隠してしまうとよいです。
波の力は、まずベニヤ板などの覆いにかかり、それからガラスに加わりますが、その力は半減されるので相当のところまでは効果が期待できます。
また、ある程度の波までは覆いによってのみ力を受けるように、ガラスと覆いの間は隙間を空けておくほうが効果があります。
 このような天候下でガラス破損を招くということは、ブリッジに水が入るということであり、こんなときにはどんな優れた電子機器も役に立たなくなってしまうことが十分予知できます。


電子機器の指示方位…GPSなどの優れた航海計器が普及し、多くのボートマンたちが愛用しているが、これらの計器が指示する目的地までのコース(針路)は真方位で指示されていますから磁気コンパスで航行する船が計器が指示する針路で航行するとその地の偏差の分だけコースが変わるために、最終的には目的地に到着しますが遠回りのコースを走ることになります。

偏差が西偏差であれば、計器が指示するコースに偏差の分だけ加え、東偏差であればその値を減じたコンパスコースで航行する必要があります。
さらに、コンパス自差があればそのコースに対する加減をしてコンパスコースの設定をします。

最近のGPSなどの機器においては、偏差入力による磁方位指示補正機能が付いていますからこれらの機能を活用することが正しいコースを航行することにつながっていくわけです。
最近では自動操舵装置とも連動することができるレピータコンパスも売り出されていて補正機能を活用すれば偏差はもちろん、ゆっくりと円を描いて一周することによって自差も自動計測して自動補正し、小型船舶としてはきわめて精度の良い指示をする機器もあります。


捻挫…船は常に揺れ動いていますので、船上を歩いていても体のバランスを崩してよろめいていたりしたときに足の置き所によっては捻挫をすることがあります。
日常英語ではSprainといって“無理な使用で痛める”の意。
強力な外力によって関節部が外れてしまう前の状態を言って、関節周囲の靭帯が伸びてしまったものを軽度の捻挫といい、靭帯が切断したり、関節部分から剥離したものを重度の捻挫としています。
一般に足首や手首、指の関節に生じやすいですが、局部を引っ張ったり、揉んだりすることは良くないといわれています。
冷たい水で十分(30分以上)冷やし、できるだけ早期に整形外科で処置をするのがよいと言われています。


日射病(熱射病)…直射日光下の運動、高熱循環下の労働などが原因となり、突然発病しますが、特に心臓、肝臓に疾患があったり睡眠不足や飲みすぎなどの体調不全の時にかかりやすいです。
まず、めまいから始まり、重症の場合には意識がなくなったりし、体温も異常に上昇しますが汗をあまりかかない特徴があります。

似かよったものに「熱疲労」というのがあって生命の危険は比較的少ないと言われており、体温はほぼ正常で発汗を伴うことが多いです。
応急的には日陰で風通しのよいところに移し、冷水で冷やすのがよいです。
熱疲労の場合には日陰で風通しのよいところに移し、毛布などで保温します。
紫外線が強い洋上においては、素人には手が付けられず、港までも時間がかかることが多いのであまり長時間直射の下にいることは避けた方がよいとともに、帽子などを着用するのがよいです。


創傷…一般には切傷をいいますが、船のなかでもよくある怪我です。
医学的には、体表面のみにかかわらず体内も含め組織の損傷を意味しているそうで、猫にひっかかれた傷に始まり弾丸でできた傷まで、すべて創傷といいます。
英語のWound、ゴート語のWundsに由来しますが、痛みに耐え兼ねて発する怪我人の呻き声にも似ています。

出血が多いときには単に出血部を押さえるのではなく、出血部を心臓よりできるだけ高い位置に維持して圧迫止血と併用します。
また、状況によっては、傷口より心臓に近いほうの脈を押さえて流血を少なくしますが、10分間以上も止めていると細胞が死んでしまうことがあるので、ときどきは血液を循環させます。


錨の抜き方…錨を入れたあと、船に引き上げるときに効きすぎて人力では抜くことができないことがあります。
こんなときにはやみくもに引っ張るのではなくロープを手操りながら錨の真上に船を持っていき引き上げることをするとか、ロープをプロペラに絡めないように船を逆の方向に走らせて錨を起こして引き抜きます。

この時にいつまでも引っ張ると、水の抵抗で錨が泳ぎ水面に浮き出てきて水の抵抗がなくなった瞬間に船に向かって飛んでくることがあるので、十分注意をして、抜けたら速やかに船を停めて素早くロープを引き寄せます。

また、効きすぎて抜けなくなる畏れがあるときや、岩場で錨が引っ掛かる畏れがあるときには、錨の後からあまり太くないロープをつなぎブイをつけて(6ミリ程度)水面に浮かしておいて、上がらないときにはこれを引き上げると簡単に上がります。

小型船におけるダンフォース型アンカーにおいては、上の細いロープを付ける代わりにアンカーロープを直接繋ぎ、そのロープをアンカリングのところまでたるませてもっていき、別の細いロープでアンカーリングに繋いでおくと、いよいよ取れない時に強引に船で引っ張ることによってそのロープが切断しても引き上げることもできます。
しかし、これは必ずしも良い方法とは言えないものがあります。

アンカーリングにつないだロープが細すぎれば、肝心なときに切れなくて意味がありません。
これには、船の大きさと天候とロープの強度の関係をよく把握できる経験豊かな人が乗っている場合か、もし流されたときに船をコントロールできる人が乗っているという条件が必要になるでしょう。


遭難信号自動発信機…遭難をしたりして他船の救助を求めるときに使用するもので、スイッチを入れると自動的にSOS信号を所定の周波数で発信する救命設備のひとつです。
 メーカーによって操作の方法は若干異なりますが、使用の方法は各機器に記載されていたり、注意書がついているので、出航する前などによく読んで、事が起きた時に対処できるようにしておかなければなりません。

滅多に使用するものではないので、バッテリーのチェックもしておくことが必要ですが、バッテリーの自然放電を防ぐために、バッテリーの端に絶縁用の紙などが挟まっているものや、接続端子(コネクター)が接続していないものがあります。
出航前に、作動の確認をすることが必要ですが、日本では一瞬たりとも確認電波といえ、発信することが禁じられているので、試験電波を出すことはできず、正常であることを信ずることしかなさそうなのが現状です。

平成3年に生じたヨットレース中の事故の場合も、新聞情報などによれば、これらの確認がなされていなかったとのことであり、救助遅延や被害拡大原因のひとつとなったのではないかと考えられます。
※試験電波については、特定の時間帯において限られた数秒間だけでも発信できるような特例事項を設けなければ、これらの装置の作動確認をすることは現実に無理なことである。
あるいは、ダミーアンテナと称する、作動を確認するアンテナを装置に付属しておくことも方法であろうし、郵政省などで各地に電波暗室を設けて一定期間ごとの確認をする制度など行政上の検討をしなければ有事の際の確実な作動は期待できません。
ほとんどのこの種のものは、一度も使われることがないものであり、使われるときには決して作動不良などがあってはならないものだからです。


水中での生存可能時間…人は、体温が水に奪われ、摂氏35度以下になると存命が危なくなるといわれています。
これは個人差もありますが、精神力によっても差が生じます。

通常、季節相応の服装で水中漂流した場合その限界は、0℃では10分から15分といわれ、10℃では2時間30分から3時間、15℃では5時間から6時間、20℃以上になると24時間以上と言われていますが、暖流のなかで70時間以上も生き延び救助されたケースも稀に存在します。また、寒冷時期に水温が下がっているときに落水をすると、単なる体温低下ばかりではなく、急激な温度の変化などによって心臓マヒを起こし、落水直後に死亡するケースもあります。
ましてやアクシデントの発生により怪我をして多くの出血をしていればなおさら体温低下に拍車がかかります。
浮力のあるものがあればこれに掴まり体を動かさず、体はできるだけ体熱の消耗を防ぐような姿勢をとります。
立ち泳ぎは運動量が多く、奨められません。


暗車…大きな船に接近すると、船尾付近の手摺りに「暗車注意」とかかれた札が下がっているのを見かけます。
暗車とは、プロペラのことです。
双暗車とは、二軸式プロペラのことです。
最近の船では2軸、3軸のものが多くプロペラが船の中央部についているものばかりではありません。
推進力を得るためのプロペラばかりでなく、スラスターといわれるプロペラは、船体の喫水下を横向きにくり抜き、この中に装着されていますが、作動させることによって船を横に押す力が働き離着岸や狭いところの旋回をやりやすくします。

この部分の外板には、小さなプロペラのマークか○のマークが書かれています。
プロペラの種類も現在ではいろいろなタイプのものが使われていて、固定ピッチの一般的プロペラ、可変ピッチのプロペラ、タグボートなどには一頃では水平に回転するシュナイダープロペラなどがありました。
大きな船のブリッジからは、船尾の下までは目が届きませんから、小さなボートが興味本位に大きな船に近づいたり、釣りなどに夢中になっているとプロペラに巻き込まれたりする事故が起きないように注意しなければなりません。


ゼイ性破壊…変形が少なく応力によって破壊する材料破壊の一種の形をいっていますが、船舶においては新しい船であっても極めて大きな波や異常な荒天下において、特に大きな変形を生ずるより先に一瞬にして船体が折れたりすることをいいます。

昭和40年代前半頃から船の巨大化に伴いこのような事故が多くなり、代表的なものとしては「ぼりばぁー丸」や「かりふぉるにぁ丸」などの事故があります。
日本近海では野島崎の沖、日本海溝付近で多く発生し、短時間のうちに沈没してしまうことから原因の究明が難しいとされていましたが、昭和60年頃尾道丸が船首船体を落としたまま初めて救助されたことがあります。
小型船舶では、波を跨いでしまうことがほとんどなく、応力が平均してしまうために意外と生じないものです。


航海灯の故障…マスト灯、両舷灯または両色灯、船尾灯は、夜間航海には安全上欠くことができないものでありますが、夜間航行中にランプ断線のため、このどれかがつかなくなってしまうことは珍しいことではありません。

最も良いのは、夜間航行をするときには予備となるスペアランプを用意しておくことです。
これは船に乗る者にとって常識的なことでもある反面、小型船舶では殆どの船がスペアをもっていないのが現状です。
船尾方向から接近する船の接近速力は他の方向からの接近速力より遅いですから、止むを得ず消灯するとするならば船尾灯が一番先です。
船尾灯のランプを外して、消えた航海灯に付け替えることが一番手っ取り早いです。

この場合には、船尾方向か接近する船について通常以上に警戒をする必要がありますがアフトデッキの照明を付けるなどすることによって、正規の照射角度は保てないにしても自船の存在を知らしめることができます。

懐中電灯などで船尾灯の代用をする場合であれば懐中電灯を厚紙や雑誌などを用いて、円錐形にして覆い、概ね135°範囲から見えるようにして後向きに縛り付けておくことも応急的対策として有効です。

生きている電球を外すとき、熱いからといって濡れた布で外そうとしたり水飛沫がかかったりすると、急激な熱変化でせっかくの電球もガラスが破損して使用できなくなるので、十分配慮することが必要です。
また、所詮あまり大きくはないのですから、12メートル未満の船に適用される全周灯によってマスト灯と船尾灯を兼ねる方法によることも一案です。
この時にはマスト灯は消灯しておくか、周囲から見えないように放熱を考えた覆いをしておきます。


F、I、O、Xの港内信号。近年になって港の出入口や水路の分岐点などにこのような文字信号を見かけます。


Fの点滅=「Free」の意味ですべての船舶の入出航自由という信号です。
Iの点滅=「In」の意味で、入港船があるので300トンから500トン以上の(トン数は港によって異なる)出航船は待ちなさい。

Oの点滅=「Out」の意味で、出航船があるので300トンから500トン以上の(トン数は港によって異なる)入港船は航路外で待機して待てという意味です。

IとXの交互表示=間もなくIに変わるので

OとXの交互表示=間もなくOに変わるので航路を航行中の(300トンから500トン)各船舶は通行できること。

FとXの交互表示=間もなくFに変わります。

Xの点滅は間もなくXに変わりますという意味で、Xの点灯は港長の許可を受けた船舶以外のすべての船舶の航行を禁止するという意味です。

したがって、Xが点滅している場合には大きさを問わず制限されますので知っておいたほうがよいでしょう。
 これらの信号を見て大きな船の出入りの状態を把握することができます。
 この他に、水路などにおいてはK、Y、Tなどがありますが、これらはそれらの水路ごとに決められていて、通行方向の表示をしています。
詳しくは港則法施行規則第8条ならびに別表第2による。(ここでは省略)


フリーボード(乾舷)…船体の中央部における全通甲板から水面までの高さのことをいって、乾舷が多いということは予備浮力が大きくなります。

船の種類などによって最低乾舷の値は異なり、船舶安全法によって規定されています。
乾舷比は船の長さに対する乾舷部分の高さの割合をいって、この値が大きいほど予備浮力があります。
乾舷を大きくすることは、単に浮力を増大させるばかりではなく、船の復元性を含めた安全性に大きく影響するところから船長はこれらのことについても配慮していなければなりません。

復元性は、重心位置と浮力の位置の関係があって、乾舷が大きいことが即安定性そのものを良くするとは限りませんが一般的にはできるだけ軽くして乾舷を多くしたほうが良いわけです。
長さが非常に長い大きなタンカーでは、荒天下において浮力の局部的荷重に依る破壊を防ぐために、水を入れて乾舷を少なくする場合もあります。

ボートなど眼高が低い位置から見たとき、大型船の乾舷はみかけよりはるかに高いことが多く、数万トンの船では一見7〜8メートルに見えていてもすぐ近くまで近づいてみれば12メートルから15メートルもあることが殆どです。


海図を見ることと読むこと…小型船舶に船長として乗る人々の多くは海図を見ることができても読むことをしないようですがこれは安全航海という意味からは危険なことです。

陸がある、岩礁がある、急潮がある、灯台があると判るのは、免許持ちであれば誰もが知っている、いや知らなければならないことですが、これは海図を見たに過ぎません。
海図を読むことができなければ船を安全に航行させることはできません。

いくつもある灯浮標が、自船のいる位置からはどのように見え、どのようなコースをとらなければならないか、西からの風が強ければ目標に向かうためには現在位置からどのような注意とコースを選定しなければならないか、周囲の状況と気象を考慮しながらコースを決めるなど、いずれにしても現在の位置を把握することから始まり海図に印されていることを基にあらゆる安全航行をすること、判断することを海図を読むといいます。
海図の各記号を全て覚えたとしてもそれだけでは海図を見ることのみが存在し、海図を読むためには船の特性、見る方向による灯台の灯火の見え方などについて普段から意識しておかなければなりません。


旗りゅう信号の合図…Sは後進で、Iは左転、Eは右転の合図と決まっていますが、Sはモールス符号で・・・、Iは・・、Eは・になっており、これは後進信号は短点3回、左転信号は短点2回、右転信号は短点1回と定められているところから方向を表わす頭文字に関係なく行動の合図として決められました。

Mに始まる3字旗信号は、Medicalを意味していて医療関係に使われますが、そもそもそれらの信号は、言葉が通じないために救助が得られなかったり、洋上における緊急の意思の疎通ができないことを考慮し共通の信号として定められているのです。

一般に、その意味を知っておいた方がいいと思われるものは次のものです。
A旗 船が掲げているか、水面のブイに取り付けられていることが多く、潜水作業を行っていることの表示です。
したがってその付近に近寄ることは人身事故を起こす可能性がありますから近づかないことです。
 
B旗 危険物積載船または危険物荷役に従事中の表示です。特に陸上に接する荷役作業中の場合には、気化したガスに通りかかった船で吸っている煙草などの火が引火することもあることを考慮しておかなければなりません。
すなわちこの付近では、火気を取り扱ってはなりません。


復唱…指示されたことなどを繰り返して言うことを復唱といいますが、一般生活ではほとんどその習慣がなくなっています。
海の上での音波の伝播距離は非常に短い。
肉声では通常15メートルくらいの距離でしか聞き取ることができません。
まして航行中においてはさらに短く、前に向かっては数メートルもないくらいである。

船の上では、指示する方もされる方もそのことを念頭に入れておいて意思の伝達をしないと「指示した筈」、「聞こえなかった」で作業上のトラブルが発生します。
伝達は大きな声で、聞こえたら復唱によって確認することが手違いによる事故を防ぎます。
セーラー服の衿が大きくなっているのは、これを立てて聞くことによって、聞こえやすくするためでもあるわけです。
これを機械的に復唱するのが大きな船舶には装着されているテレグラフといわれる装置です。
船内における作業は復唱ばかりではなく、指示事項の作業を完了したら完了の報告をすることが同じ意味で大切なことになります。


フェンダー…フェンダーの大きさ (太さ) は太いほうが船体のためにはよいが、太すぎると岸壁と船を行き来する場合にその間に落水してしまう可能性を考慮するならば、通常それぞれの船に装備されたものより 5 割程度太目のものがよいと思われます。

しかしながら緊急的避難の場合に、現実には、そのようなフェンダーを用意することはできないのも事実ですから船にあるものを利用して有効な方法を考えなければなりません。
フェンダーのセッティングについては通常であればクリートなどにぶら下げておきますが、船体が大きく揺れたり岸壁に強い力で擦りつけられてフェンダーを吊っているロープが切れてしまうことが考えられます。
そのためには、船体に吊るしたフェンダーが前後に動かないようにフェンダーの下をロープで固定します。
フェンダーの太さが不十分なときには使わないフェンダーを横にしてフェンダーと舷の間に挟むことによって効果をもたせることができます。

こんな時のためにも、ロープはアンカーや係船のためだけではなく、前にも述べたように大小 3 〜 4 種類は船に積んでおくのが望ましいし、積んでおく必要があるのです。
よく、固定された桟橋にフェンダーを吊るしている人を見かけますが、基本的には邪道です。
なぜならば、太平洋側の多くの港などでは干満の差があり、大きくは2メートルにも 3 メートルにもなりますから、小さな船がこのようなことをすると干満によってフェンダーの位置が船体より上方になってその役割を果たさないことになりますし、出航の際に、はずし忘れてきてしまうのがオチだからです。
一番望ましいのは、台風などの避難においては上架するのがよいのですが、現実、これも難しい部分がありますから係船によって難を逃れるしかありません。


ロープのとり方…基本的に岸壁に対してはスターンライン、バウライン、アフトスプリング、フォアスプリングの 4 本のロープによります。

通常の係留はバウラインとスターンラインで済ませますが、こうすることによって船体が陸に対して平行を保つ性質があるので、干満の差などによるロープの緩みが生じても船体が斜めになることによる船尾の破損を防ぐことができます。
しかしながら干満の高低差に加えて波浪やうねりの入り方によっては岸につないでいたのではロープで調整だけでは安全が確保できないようなこともありますから、このようなときには岸からできる限り遠ざけて係留しなければなりません。

防波壁によって囲まれているような漁港に避難した場合で、防波壁を越えて波がかぶってくるような時には水面の上下は想像を超える量に達し、岸壁につないでおくことはかえって大破沈没ということにもつながりますから岸から離すことを考えなければなりません。
このパターンは今から 16 年くらい前に筆者が 44 フィート艇で新島漁港に滞在している時に台風が到来し、下田港に避難する時間的余裕すら無くなってしまった時に採った処置でもありますが、島の関係者の協力も得られ、延べ 1200 メートルのロープを使い無事やり過ごした事があります。
この時には手持ちのロープ 600 メートルに加え約 600 メートルのロープを漁師の方々が貸してくれました。
防波堤を乗り越えた波によって港内は多き水面が上下し、とてつもない力で船を流そうとしますから、船体の周りにもロープをめぐらしそこから係船索を取らないと、ビットやクリートだけではとても堪えられずにひきちぎられてしまいます。
通常の荒天避難の場合であれば岸壁係留でありましょうが、例えば他の船舶など曳航物件がある場合には係留や錨泊をするについて、曳航索は解放し、切り離しておく事が常識です。
なぜならば、万が一、急ぎ移動しなければならなくなる事態が生じたとき、行動が制限されて思わぬ二次的アクシデントが発生すからです。


もうひとつ台風下における体験を述べておきます。
昭和 54 年ころの 8 月、東京を台風が直撃したときの話である。台風が東京を狙っていることは前日の予想でもわかっていたのであるが、もっとも風雨が強くなるのは午後の 3 時ころといわれていた。

そのころ、筆者の所有する 44 フィートのモビーデイック号は東京荒川区南千住の隅田川に係留していたので、朝 9 時ころにマリーナまで行けば対処できるものと思っていた。
係留場所の両岸はコンクリートでできたしっかりとした護岸で固められていた。
マリーナに着いたときにはかなりの風が吹いていて、台風情報を聞くと予想以上に速度が早まって、桟橋を見るとすでに今までにないほど水位があがっていて、ロープをとっている桟橋を固定している柱から桟橋が外れそうになっている。
「これは大変だ!」何をさておいても桟橋とそれにつながる船を流してしまうわけにはいかない。川面にはすでに風が走りぬけるにおきる表面のざわめきが形となってたわむれている。

モビーデイック号のもやいは、船首から一本、船尾には陸からの一本と沖に一本のアンカーロープが入っているだけであり、平素はテンダーでモビーデイックに渡船していたのであるが、雨や風の状況から見て手漕ぎのボートで渡ることは、これを沈没させてしまうおそれが多分にあった。
おまけに今のままでは船首のロープは桟橋もろともいつ外れてしまうからない状況であるから、何が何でももう一本のロープを確保しなければならなかった。

もしも桟橋が流れ始めれば舟は船尾のロープによって左岸に衝突し破壊してしまうであろうし、船尾のロープが運良く切断しても、今度は風によって右岸のほうに流され、対岸で同じことが生じてしまうのは明白であった。
船を岸から離して、川の中央にアンカーリングするのが一番よいと考え、救命胴衣を身に着けて船首ロープを握ると、それにぶら下がりながら船まで渡った。
しかしこれも大きな問題があった。
隅田川の底質は泥というよりヘドロであるから錨の効きはすこぶる悪く、錨だけに頼っていたのではこの大風の中、安全が保てないことは火を見るより明らかなことであったのだ。
おりしもエンジンの各部についている防食亜鉛は取替えのために全部抜いてあったからエンジンを始動するには、予備の亜鉛を装着する作業から始めなければならなかった。

船尾の係船ロープとアンカーロープを引き上げ船を沖合いに出すと錨を投じ、岸から取ってあったロープをはずすとアンカーロープが目にも留まらぬ早さで繰り出していく。
アンカーロープが出きってしまわないうちに、コントローラーを前進にして、それでいて船が前に出すぎてロープがプロペラーに巻き込まないように注意して制御した。
そして前方をにらみ、川面の色が風とともに変わってくるとこれに負けないように前進にしてアンカーにかかる力を少なくしその強風が去ると中立にする。
そんなことを繰り返すこと時間余り、くたくたにくたびれてはしまったが無事台風をやり過ごすことができた。

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